会社の未来を見据えて「こんな資格を持っていたら役立つかもしれない」という思いから、百貨店従業員では珍しい『宅地建物取引士(通称:宅建)』資格を取得した当社社員にインタビューしました。資格を取るまでの経緯や、資格取得の勉強で大変だったことや面白かったこと。資格取得への想いなど、現場を支えている社員の裏側を探ります。
 宅建取得に至ったきっかけ
2013年入社の大島係長(営業政策部 EC担当)は、子ども服売場、婦人洋品売場を経験した後、2015年~2020年までの5年間、京王電鉄株式会社に出向し、配属先の京王電鉄のSC営業部(当時)では、「京王聖蹟桜ヶ丘ショッピングセンター」および「京王八王子ショッピングセンター(K-8)」の運営に関わりました。
※京王八王子ショッピングセンターは2024年3月31日より休業中。
出向中は、ショッピングセンター内に出店予定のお取引先と、さまざまな契約に関わる交渉を重ね、両社にとって納得のいく契約条件に着地させたり、入店後は店長と良好な関係を築き、運営に問題がないかなど、こまめにヒアリングすることでショッピングセンター全体の活性化に務めました。
(2026年現在は、両ショッピングセンター共に、株式会社京王SCクリエイションが商業施設の運営事業を担っています)
大島「京王電鉄の『開発事業本部 SC営業部』に出向し、SC(ショッピングセンター)の運営に携わりました。開発事業本部では、沿線の活性化を目指し、新規賃貸資産の開発や賃貸資産の管理・営業、ショッピングセンターの管理・運営、社有地の総合管理を担っていたため、宅建の資格取得が推奨されていました。
ショッピングセンターは不動産業ではあるのですが、所有物件内の区画を定期建物賃貸借契約にて自ら賃貸する場合は宅地建物取引業には当たらないため、宅建の資格は必要ありませんでした。」
この時点では実務に必要とされていない資格だったため、宅建を取ろうと思うまでに至らなかった大島さん。それでは、いつのタイミングで宅建を取ろうと考えるようになったのでしょうか。
大島「京王電鉄への出向から京王百貨店に戻ってきたのが2020年7月。それから約1年半が過ぎ、現職であるEC担当という新しい業務に慣れてきた頃の2022年4月に、京王電鉄とJR東日本の『新宿駅西南口地区の開発計画』に関する共同プレスリリースが目に留まりました。そこには、京王百貨店の場所に建てられる予定の新しい施設のイメージ写真が掲載されていました。
いよいよ、京王百貨店 新宿店の建て替えが近づいてきているという不安も感じましたが、こういった“街づくり”に関わる商業施設の在り方について京王電鉄への出向時にたくさん学んだこともあり、ワクワクした気持ちの方が強かったと記憶しています。その中で、宅建資格を取っておけば将来役立つのではないかと思い立ち、6月から勉強を始め10月に試験を受けて合格しました。」
※画像は京王電鉄株式会社提供。
 合格率16%の狭き門
宅建とは、不動産取引の専門家であることを示す国家資格で、不動産取引の際に、購入者などが損をしないよう「重要事項の説明」を行ったり、契約書に署名・押印したりする独占業務があり、資格保有者にしかできない業務があります。宅建の合格率は16%前後で、合格者は5~6人に1人といわれている難関国家試験です。どのように勉強に挑んだのでしょうか。
大島「本をいくつか購入し、仕事で使っている手帳のメモページに要点をまとめ、通勤時間に目を通して暗記するというのが主な勉強方法でした。そのほかにもYouTube上にあがっている解説動画が試験対策につながりました。ほぼ毎日仕事終わりにキックボクシングのジムに通っているので、ジムから帰宅し11時頃から夜の1時頃まで勉強するという日々を4カ月続けました。キックボクシングは頭部に打撃を受けることもありますので、宅建の勉強をすることで『頭部に受けた打撃で記憶力悪くなっていないよね?』という自身の記憶能力に問題がないかどうかのバロメーターにもなっていました。(笑)」
※写真は大島さんお手製の勉強ノート
通勤リュックに詰め込まれた、キックボクシングのギア
試験内容は「権利関係(民法等)」「宅建業法」「法令上の制限」「税・その他」の4分野から出題されるのですが、「宅建業法」の部分が最も出題数が多く、これについてはとにかくひたすら暗記の一路だといいます。まるで学生に戻ったかのような気持ちになったのではないでしょうか。
大島「暗記部分については理論は関係なく、とにかくA=B、C=Dのようにこういうものだと覚えていかなければなりません。試験は『選択式』回答のため、ひっかけ問題に惑わされないようにと、過去問題集も量をこなして傾向と対策に挑みました。」
 勉強の中で得た気付き
宅建の試験は50問。内訳として「権利関係(民法等)」が14問、「宅建業法」が20問、「法令上の制限」が8問、「税・その他」が8問出題されます。幅広い内容について学習することが必要ですが、これらの中で何か興味をひかれた分野について伺いました。
大島「実は、民法に関わる部分が個人的には非常に興味深く、楽しく勉強できたと記憶しています。法律に関わる問題は、文章から読み解く力を試されているような印象を受けました。昔から現代国語(現代文)が得意だったので、文章を自分なりに咀嚼することは『面白い』と感じました。自分自身が得意なことや好きなことは社会に出てからも役立つことを実感しました。
宅建資格は、今すぐ現在の業務で役立てられるものではありませんが、2030年には京王SCクリエイションとの会社統合を控える中で、少しでも不動産業に関する知識を持っておくことは、自分自身はもちろん会社としても大きなメリットになるのではないかと感じています。」
 さらなる資格取得で業務に反映
宅建取得で勉強意欲に火がついた大島さん。もっと知識や技術を自分のものにしたいと思うようになったとのこと。今度はせっかくならば今の業務に反映できるものがいいのではと考え、2024年9月に「ウェブデザイン技能士3級」を取得しました。
大島「宅建は自費で取得したのですが、『3級ウェブデザイン技能士』資格は業務効率化のために必要だと感じたため、当時の上司である関課長に相談したところ、会社から資格支援をいただけることになりプログラミングの学校に通い受験しました。
EC運用は、大部分をノーコードで運用できるCMS(コンテンツ・マネージメント・システム)を活用していますが、直接ソースコードを修正しなければならない場面が多々ありました。ECは、土日も祝日も関係なく、リアル店舗が閉店した後の夜間も正常に機能していなければなりません。しかし、急なトラブルや修正対応が発生するたびに外注で全て対応するとなると、土日や祝日が理由で対応が遅れたり経費もかさんでしまいます。そのため、本資格を取得したことで、担当内のストレスや業務負荷も軽減され、業務・経費の効率化につながりました。」
 今後の抱負
2026年度には「IT パスポート」にチャレンジする予定の大島さん。経営戦略、マーケティング、財務、法務、IT、プロジェクト管理など幅広い知識を問う試験で、エンジニアの登竜門として人気の国家試験です。
大島「プロのエンジニアを目指しているわけではありませんし、AIの進化が著しい現代において、ノーコードでできることも増えています。しかし、基礎知識があるかないかで、課題発見や課題解決の方向性を見つける速度は段違いに変わると感じています。さらに、これからは省人化による『効率的な仕事の進め方』が求められていると感じていますので、これからも資格取得に限らず業務に必要な知識を深める努力を継続していきたいです。」
 資格取得を検討している方へのアドバイス
さまざまな資格に挑み続ける大島さん。これから資格取得に挑戦しようと考えている皆さんに何かアドバイスはありますか。
大島「どんな知識や技術も、ないよりあった方が断然に世界が広がります。知識により見えてくる世界が変ったり、技術により自分自身の仕事が楽になるだけでなく、周りのチームへも良い影響を及ぼすことができるようになります。
試験勉強は大変ですが、仕事・プライベート・勉強とそれぞれの時間にメリハリをつける事で身体的にも精神的にもいい影響が出るような気がします。自分自身は、20代後半から始めたキックボクシングのほか、モータースポーツという趣味もあり、茨城県の『筑波サーキット』や、静岡県の『富士スピードウェイ』に日帰りで行っています。好きな事をやったから、勉強への時間も集中してやろう。または勉強を頑張ったからご褒美にプライベートはしっかり遊ぼう。そんなメリハリを持つことで勉強への集中力が高まると思います。」
大島「試験日が近くなったときのプレッシャーは大きいですが、無事に合格できたときの達成感はひとしおです。少しでも興味が湧いたら思い切って勉強を始めてみるのもおすすめです。」