京王百貨店 特徴ある取り組み
有名駅弁と全国うまいもの大会

京王駅弁大会物語

各地の駅弁を常時販売する店舗も存在する中で、大会の実演販売になぜあれほどの列ができるのでしょうか。実演販売を担うのは、調製元と呼ばれる駅弁製造会社のプロ達。会場で実際に調理・販売する調製元に、駅弁づくりの想いや大会にまつわるエピソードを聞きました。

新杵屋

牛肉どまん中

新杵屋

2000年の35回大会に彗星のごとく現れ、以降18年間連続してベスト10にランクインする「牛肉どまん中」の新杵屋。実演部隊を率いる亀山直人さんに聞きました。

インタビューは2017年12月に実施

―「牛肉どまん中」は「日本一売る駅弁」の異名を持つといわれています。

地元米沢駅や新幹線での販売のほかに、東京、上野、千葉、大宮の駅売店にも、今では米沢の工場から毎日お届けしています。催事と合わせて、年間で60万食ほどでしょうか、おかげさまで「日本一」なんて言われることもありますが、発売当初は当社の数ある駅弁の中の1つにすぎなかったと聞いています。看板商品となったのは、35回大会「牛肉対決」に登場して以降のことです。

―大会への出店交渉は、当時の担当者が御社を突然訪問したようですね。実はその時の初登場2位という記録は、大会史上「牛肉どまん中」を入れて4駅弁しか成し遂げていない偉業です。

私も入社前のことですが、社長が「事前の電話もなく、本当に突然の来社だった」と。しかし、出場するからには売ろうとなった。もともと実演を何度も経験しており、「牛肉どまん中」自体、幸いにも実演向きの商品だったんです。折箱も重ねられるから、狭い実演ブース内でもお客様に合わせてどんどん作りだめができる。役割分担して作り続ける体制も当初からで、お客様の数に合わせて作り続けられる。社長は「これも戦略だ」なんて言っています(笑)。

―確かに、実演ブースで新杵屋さんほど折箱を高く積んでいるところはないです!

この折箱、レンジで温めることもできるし、温かいままご飯を入れることもできます。「温かいお弁当を届けたい」という当社のこだわりなんです。さすがに遠方は無理ですが、米沢駅や新幹線内ではなるべく温かい状態でお出しするようにしています。

―「冷めている」が常識の駅弁の中で、一際目立つ存在なのはこれも理由の一つですね。大会ではいつも多くのお客様がいらっしゃいます。「いかめし」を除くと、18年連続のベスト10入りは最長記録です。

京王の実演部隊は、臨時の従業員も含めて12人のチームです。うちは年間40回程度実演出店をしますが、京王のチーム編成が一番多い。他店の3倍の人数で臨みます。大会に初参戦した当時から変わらず、ある人はひたすらご飯を詰める、ある人はおかずを詰めるだけ、と完全な分業による量産体制です。私が初めてこの大会を経験したのは2010年で、会期中2万6千個以上という過去最高の販売記録を出した年です。朝から晩まで弁当を作り続け、本当にもう、泣けましたよ(笑)。

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―閉場時間近くなると予定数量や材料切れで販売終了のブースも多くなってきますが、新杵屋さんはかなり最後まで販売していますよね。

せっかく来たのに売っていなかった、と残念な思いをされないように可能な限り最後まで作り続けるようにしています。昔は、トイレにもいかずにひたすら作り続けるのが美学、みたいなところもありました。さすがに今はやめていますけどね。それでも4~5時間は立ちっぱなしですが、我々も売るために来ていますし、温かい作りたてのお弁当を東京の人に食べてもらえるのは、やはり実演ならではの醍醐味です。

 最近は、醤油味の「牛肉どまん中」のほかに塩味やみそ味、3つの味が一折に入った「三味牛肉どまん中」も実演で販売しています。皆さんに飽きが来ないように始めましたが、違う味を食べると「またいつもの醤油味が食べたい」と思われるお客様も多いようで、ありがたいことです。愛され続ける駅弁であるよう、これからも努力していきます。

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